2025年03月28日

50年を経て、海を超えて交じりあったエンゲージリング


2本の指輪は、おひとりの方に贈られたエンゲージリングです。
2つの指輪が海を渡って交じりあい、こちらの2本のリングに生まれ変わりました。

50年を経て、海を超えて交じりあったエンゲージリング

50年を経て、海を超えて交じりあったエンゲージリング

ご相談にいらしたのは、アイルランド人の女性様と日本人の男性様。
それぞれのお母様から婚約指輪を譲り受け、
「2本を組み合わせて、エンゲージリングを作りたい。」
とご依頼をいただきました。

左が男性様のお母様の婚約指輪です。39年前に贈られたもの。
右が女性様のお母様の婚約指輪。こちらは49年前です。

アイルランドでは、ケルティックと呼ばれ、ブルーサファイアやグリーンサファイアのエンゲージリングが伝統的だそうです。小さい頃からお母様のジュエリーボックスを覗くのが好きだったという女性様、ご結婚を機に譲り受けたのだそう。

50年を経て、海を超えて交じりあったエンゲージリング

深いブルーのサファイアリングは、素敵なアンティークの雰囲気がありますが、
「高さを抑え、髪にひっかからず、普段から着けられるリングにしたい。」
という強いご要望がありました。

当初のお考えは1本のリングにということでしたが、センターストーンがどちらも立派でカジュアルに着けるには華やかになり過ぎてしまいます・・・。
何より40〜50年の時を経て、また海を渡って、ストーンが交じりあうことはとてもロマンティックだと思い、ダイヤ3石と、ケルト文化の伝統を引き継ぎサファイア1石の、2本のエンゲージリングをご提案させていただきました。

マリッジリングと合わせて3連で着けても素敵ですし、左右で着けるなどスタイリングを楽しめます。

50年を経て、海を超えて交じりあったエンゲージリング

サファイアを横向きにセッティングし、リングの高さも抑え、カジュアル・モダンに大変身しました。

50年を経て、海を超えて交じりあったエンゲージリング

サファイアのリングには、アイルランドのお母様の婚約の日を、日本のお母様の石がセンターストーンになったダイヤリングにはおふたりのお母様の名前をお入れしました。

50年を経て、海を超えて交じりあったエンゲージリング

50年を経て、海を超えて交じりあったエンゲージリング

アイルランドと日本。
お母様やお父様の想いも海を超えてこめられたスペシャルリングです。

50年を経て、海を超えて交じりあったエンゲージリング


コンセプト ジュエリーワークス
デザイナー 橋本志織


-旅のブログ掲載中-
−アートと建築の旅@− フランス【マティス ロザリオ礼拝堂 / ヴァンス】
−アートと建築の旅A− フランス【マティス美術館 / ニース】
−アートと建築の旅B− フランス【国立ピカソ美術館・陶器美術館 / ヴァロリス】
−アートと建築の旅C− フランス【ピカソ美術館 / アンティーブ】
−アートと建築の旅D− フランス【ラ・トゥーレット修道院 / リヨン】
−アートと建築の旅E− フランス【ル・コルビュジエ ノートルダム・デュ・オー礼拝堂 / ロンシャン】
−アートと建築の旅F− フランス【マジョレル邸 ・ナンシー派美術館 / ナンシー】
−アートと建築の旅G− フランス【ル・コルビュジエ サヴォワ邸 / ポワシー 】
−アートと建築の旅H− フランス【二コラ・ド・スタール展 / パリ】
−アートと建築の旅<旅のおわりに>− フランス【画家が見た光を探して】


[お問い合わせ・ご予約]
03-5708-5043
www.concept-jw.jp









posted by CONCEPT JEWELRY WORKS at 16:09 | Comment(0) | TrackBack(0) | 【結婚指輪&婚約指輪】

2025年03月15日

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」


デザイナーの橋本です。
2023年12月28日から2024年1月11日に訪れたフランス「アートと建築の旅」。
これまで9回にわたりご報告させていただきました。

この旅のテーマは「画家が見た光を探して」
最後に、その視点でこの旅全体を振り返ります。

私がたどった行程はこのようなルートです。
南フランスから入り北上し、パリがゴールでした。

フランス白地図 最終0322-529568.jpg

旅のスタートは、南フランスのコート・ダジュールでした。

【南フランス(コート・ダジュール)】

コバルトブルーの海岸線が続くコート・ダジュールは、冬でも明るい陽光が降り注ぎます。
最初に向かったのは、坂を上がったヴァンスの旧市街。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」

<マティス / ロザリオ礼拝堂>

ヴァンスは、この礼拝堂を手がけるためマティスが最晩年に過ごした場所です。
地中海の温かで穏やかな陽光が、マティスらしいデザインのステンドグラスを通して床や壁に混ざり合い、空間が色と光で満たされていました。
とても明るい礼拝堂で、訪れた人々をリラックスさせ、幸せでやさしい気持ちに導きます。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」
礼拝堂内部(マティス 82歳)


旅の序盤に滞在したニースは、青い海と青い空、そしてゆったりと流れる時間が多くの芸術家を魅了した場所。
マティスは48歳でニースに出逢い、85歳で亡くなるまでの37年間この地を拠点に過ごします。
「この光を毎朝見られると思うとその幸福が信じられなかった。」
と語っています。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」

<マティス「ザクロのある静物」 / マティス美術館>

晩年のマティスは体力とともに視力が衰えていく中、「人生における歓び」を投影したような作品に取り組みます。
ニースの美しい光と色彩に恋したマティスにとっては、まぶたの裏に焼きついたものを表現するような感覚だったのではないでしょうか。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」
ザクロのある静物(マティス 78歳)


山の中腹にある陶芸どころのヴァロリスも陽光降り注ぐ明るい町です。

ピカソも、晩年南フランスに魅了された画家のひとりです。
65歳で陶芸に出逢い、91歳で亡くなるまでヴァロリスを拠点に制作しました。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」

<ピカソ「戦争と平和」 / 国立ピカソ美術館>

終戦の開放感から平和を享受し、新しい家族の形もでき、ヴァロリスの人々にも愛され、心から喜びに満ち溢れたように陶芸に没頭します。
礼拝堂の壁一面に描かれた大作「戦争と平和」。
ドーム内部に「光と影」を対象的に描いており、その迫力に圧倒されます。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」
戦争と平和(ピカソ 71歳)


岬のある城壁に囲まれたアンティーブにもピカソ美術館があります。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」

<ピカソ「ライムのある静物画 2匹の魚とウツボ」 / ピカソ美術館>

ピカソはこの城の海側の光溢れる部屋を2ヶ月間アトリエにし、意欲的に制作しました。
穏やかな地中海を見おろしながら、優しい心もちと顔つきでキャンバスにむかうピカソの姿が目に浮かびます。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」
ライムのある静物画 2匹の魚とウツボ(ピカソ 65歳)


ほど近い場所に、ド・スタールの最晩年のアトリエもあります。

<二コラ・ド・スタール「アンティーブの城砦」 / ピカソ美術館>

この頃のド・スタールは、徐々に不穏になる恋人との関係や作品制作へのプレッシャーなのか、気持ちを反映しているように色彩の彩度が落ち着き、モノトーンやシックな作品が増えていきます。
地中海をのぞむ光が豊かな鮮やかな風景も、曇り空のような気持ちで描いたのか、はたまた美しい曇り空の日にインスピレーションを得て描いたのか・・・。
グレーに豊かな色彩を感じさせるのがド・スタールの魅力です。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」
アンティーブの城砦 (ド・スタール 40歳)

一方、アンティーブの前に拠点にしていたプロヴァンス・メネルブで描かれた作品では水面をオレンジで表現しています。彼の心の目がその時々の光をどう捉えていたかを想像することが出来ます。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」
マルティーグ(南仏)(ド・スタール 40歳)


海岸線を離れ、内陸部・リヨンに向かいました。

【リヨン(ローヌ・アルプ地方)】

ソーヌ川とローヌ川が流れる美しい街並みのフランス第2の都市リヨンは、川に映る景色が光輝く活気ある街です。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」

リヨン近郊の丘の斜面に建つル・コルビュジエが手がけたラトゥーレット修道院を訪れました。

<ル・コルビュジエ / ラトゥーレット修道院>

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」

内部に入ると、光の大砲と呼ばれた丸い形の採光窓から斜めに入ってくる自然光がやさしく降り注ぎます。
コルビュジエが時間の経過や季節の移り変わりをドラマティックに演出した光は、南フランスで感じた明るい光とは異なり、内なる世界へ向かう静謐な光でした。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」
修道院内部(コルビュジエ 73歳)


さらに北上し、なだらかな起伏が点在する実り豊かなブルゴーニュ地方へ。

【ディジョン(ブルゴーニュ地方)】

陽射しが強めのこの地方ですが、スイス国境にほど近いロンシャンに向かうと、ぐっと体感温度が下がります。

<ル・コルビュジエ / ロンシャン礼拝堂>

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」

外界とはうって変わり、内部に入ると暗い礼拝堂に南側から星のように煌めくたくさんの光が巡礼者を迎えます。
台形にくり抜かれた奥行きのあるガラス窓から差し込む優しい外光の拡散によって、礼拝堂全体に詩的で宇宙のような世界が広がります。リヨンの修道院の光とは異なる演出を感じます。

IMG_9118-kann.jpg
礼拝堂内部(コルビュジエ 68歳)


フランス北東部のグランテスト地方は、ドイツと国境を接し内陸の雰囲気が漂よいます。
アール・ヌーヴォー発祥の地ナンシーへ。

【ナンシー(グランテスト・ロレーヌ地方)】

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」

<ルイ・マジョレル / マジョレル邸>

エミール・ガレが中心となったナンシー派の芸術家とこの町の職人が「生活を芸術に!」を胸に、新しい素材や表現方法に果敢に挑み多くの作品を生み出しました。
特にステンドガラスやガラス工芸は花開きました。
マジョレル邸はステンドガラスや変形ガラスの採用が印象的かつ効果的で、光を存分に取り入れた華やかでエレガントな室内です。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」
マジョレル邸テラス(ガレ 43歳)


そしていよいよ、パリを中心に自然と文化のイル・ド・フランスへ。

【ポワシー・パリ(イル・ド・フランス)】

パリ近郊・ポワシーの気候は、さらに気温が下がり雪が降り始めました。

<ル・コルビュジエ / サヴォワ邸>

散歩道のような木々を抜けるとコルビュジエが手がけたサヴォワ邸が姿を現しました。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」

「ピロティ、屋上庭園、自由な平面、水平連続窓、自由な立面」という近代建築の5原則が見事に体現されたサヴォア邸は、まさに「光との共演」といえます。
建物の荷重が柱で支えらるようになったことで、革新的な大きな窓や水平連続窓など光をふんだんに取り入れ、外界との境目を無くしたような解放感のある居住空間が実現しています。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」
屋上庭園(コルビュジエ 44歳)


そして、旅のゴールは、パリ。
滞在中はおひさまを見られず雪模様が続きました。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」

<ピカソ「タンバリンを持つ女」 / オランジュリー美術館>

印象派をはじめ、多くの画家たちに愛されたパリ。
ピカソもそのひとりです。
オランジュリー美術館で見たピカソのパリ・アトリエ時代の作品です。
結婚後、バレエなどの舞台衣装を制作したり、彫刻に専心したりと充実していた時代に描かれた一枚。
晩年とは異なる希望や自信を絵から感じます。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」
タンバリンを持つ女(ピカソ44歳)
 

最後の訪問は、私が想い続けてきた画家・二コラ・ド・スタールでした。

<二コラ・ド・スタール「コンポジション」 / パリ市立近代美術館>

ロシア生まれのド・スタールは、画家としての歩みをパリ・ゴーゲ通りのアトリエから始めます。
最愛のパートナーの死を乗り越え、新しい家族のために精力的に制作に励みます。
「黒の時代」を経て白色や明るい色が使われるのは、未来に確かな光を見ていたに違いありません。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」
コンポジション(ド・スタール 34歳)


私の「アートと建築の旅」は、画家の見た光を探して、歩いたロードムービーのような楽しいものでした。
多くの画家たちは、制作活動が充実していったり、その晩年には南フランスに向かい過ごしているので、私はその逆をたどったともいえます。
南フランスから北へ北へとフランスを縦断していくと、気候の変化とともに、光の量や性質の違いを確かに感じることが出来ました。

あの時の画家はその地の光をどのように感じ、見ていたのか、捉えていたのか・・・
アトリエを構える場所で気分が変化し、過ごす時間が変わり、作風が変わっていくのが分かりとても興味深かったです。
ピカソやマティスやド・スタールが愛したヴァンスやアンティーブは、私もとても魅了されました。

今回は冬の旅でしたが、また違う季節にきて考察してみたいと思いました。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」


コンセプト ジュエリーワークス
デザイナー 橋本志織


-旅のブログ掲載中-
−アートと建築の旅@− フランス【マティス ロザリオ礼拝堂 / ヴァンス】
−アートと建築の旅A− フランス【マティス美術館 / ニース】
−アートと建築の旅B− フランス【国立ピカソ美術館・陶器美術館 / ヴァロリス】
−アートと建築の旅C− フランス【ピカソ美術館 / アンティーブ】
−アートと建築の旅D− フランス【ラ・トゥーレット修道院 / リヨン】
−アートと建築の旅E− フランス【ル・コルビュジエ ノートルダム・デュ・オー礼拝堂 / ロンシャン】
−アートと建築の旅F− フランス【マジョレル邸 ・ナンシー派美術館 / ナンシー】
−アートと建築の旅G− フランス【ル・コルビュジエ サヴォワ邸 / ポワシー 】
−アートと建築の旅H− フランス【二コラ・ド・スタール展 / パリ】



[お問い合わせ・ご予約]
03-5708-5043
www.concept-jw.jp









posted by CONCEPT JEWELRY WORKS at 14:53 | Comment(0) | TrackBack(0) | 【SHIORI HASHIMOTO tabi-blog】

2025年02月28日

個性の強い色石たちをアンサンブルのように楽しむ


個性の強い色石たちをアンサンブルのように楽しむ

デザイナーの橋本です。
SHIORI HASHIMOTOのオリジナルデザイン「ENSEMBEL(アンサンブル)」をご紹介します。

「ENSEMBEL(アンサンブル)」のもとになっているのは、
私がジュエリーの道を目指していた時に通った学校で制作したリングです。
課題は「色石の立爪リングの石留め」でしたが、色石を生かすウキウキするデザインにしたいと、海外のコンテンポラリーアートジュエリーの画集を見て、アートで自由な表現にイメージを広げ、デザイン・制作したものです。

個性の強い色石たちをアンサンブルのように楽しむ

SHIORI HASHIMOTOを立ち上げる際、コンセプトをかためて、ENSEMBEL(アンサンブル)と名付けました。
小人数の合奏のごとく、個性の強い複数の石が調和し、響きあうように。
石の形や色彩を生かすため、指の間に浮かぶシンプルなデザインやアンバランスなバランスが特徴です。

この遊び心のあるデザインはご好評いただき、これまで色々な石で制作させていただきました。

今回のご依頼はシックな赤色のガーネット。
お母様から譲り受けたリングのスクエアカットと、お父様のラペルピンのオーバルのふたつのガーネットです。

個性の強い色石たちをアンサンブルのように楽しむ

お打ち合わせの際、私の指にしたこの学生時代のリングをみて、
「このデザインで作ってみたい!」
とご用命いただきました。

今回のポイントは、石が正方形でも真円でもないこと。
縦横のいくつかのパターンを考え、印象的でリズミカルな配置に。

個性の強い色石たちをアンサンブルのように楽しむ

イエローゴールドで爪のないデザインは、よりモダンな雰囲気をまといます。
今回も大人の遊び心がいっぱいつまったリングになりました。

他のジュエリー・アクセサリー、時計やファッションとのアンサンブルも、存分にお楽しみくださいね。

個性の強い色石たちをアンサンブルのように楽しむ

左右で違う形、違う色、サイズ違い、変形石でもグラフィカルで素敵になると思います。
お手持ちの色石が複数ございましたら、お気軽にご相談くださいませ。


コンセプト ジュエリーワークス
デザイナー 橋本志織


-旅のブログ掲載中-
−アートと建築の旅@− フランス【マティス ロザリオ礼拝堂 / ヴァンス】
−アートと建築の旅A− フランス【マティス美術館 / ニース】
−アートと建築の旅B− フランス【国立ピカソ美術館・陶器美術館 / ヴァロリス】
−アートと建築の旅C− フランス【ピカソ美術館 / アンティーブ】
−アートと建築の旅D− フランス【ラ・トゥーレット修道院 / リヨン】
−アートと建築の旅E− フランス【ル・コルビュジエ ノートルダム・デュ・オー礼拝堂 / ロンシャン】
−アートと建築の旅F− フランス【マジョレル邸 ・ナンシー派美術館 / ナンシー】
−アートと建築の旅G− フランス【ル・コルビュジエ サヴォワ邸 / ポワシー 】
−アートと建築の旅H− フランス【二コラ・ド・スタール展 / パリ】



[お問い合わせ・ご予約]
03-5708-5043
www.concept-jw.jp








posted by CONCEPT JEWELRY WORKS at 14:35 | Comment(0) | TrackBack(0) | 【order RING】

2025年02月15日

−アートと建築の旅H−フランス【二コラ・ド・スタール展 / パリ市立近代美術館 】Nicolas de Staël / Musée d'Art Moderne de Paris


デザイナーの橋本です。
2023年の暮れから2024年の始めに訪れたフランス「アートと建築の旅」。

旅のゴールは、学生の頃から想い続けてきた画家 二コラ・ド・スタールの探訪です。アンティーブのピカソ美術館で残念ながら会えなかったド・スタールを、パリで開催されていた大回顧展(2023/9/15-2024/1/21)で挽回しました。

目的は、自分自身が「ド・スタールの何に魅せられてきたのか」を知ること。

期待を胸に、パリ中心部セーヌ川ほとりのパリ市立近代美術館へ。

アートと建築の旅 フランス 二コラ・ド・スタール展

アートと建築の旅 フランス 二コラ・ド・スタール展

到着し、まず驚いたのは、その人気の高さです。
日本ではあまり語られることのない彼の作品ですが、フランス国内では以前開催されたポンピドゥ―センターの展覧会から22年ぶりだったこともあり、パリジャン、パリジェンヌでいっぱいでした。
観光客らしき姿は全く見られず、特に高齢の方が多い印象。

学芸員にド・スタールの発音を教えてもらっていたり、作品について積極的に質問したり・・・、といたるところで活発な様子。
「アートを考察する」という真剣な雰囲気が伝わってきます。

この訪問の新たな目的が加わることに。
「フランス人をここまで惹きつけるド・スタールの魅力とは・・・」

アートと建築の旅 フランス 二コラ・ド・スタール展

今回はヨーロッパ・アメリカのパブリックおよびプライベートコレクションから集められた200点の絵画、デッサン、版画が年代別に展示されており、時代によるスタイルの変遷が見られる貴重な内容でした。

ロシア人の二コラ・ド・スタール(1915-1955)は、ロシア革命でポーランドに家族で亡命、父母を亡くしベルギーの養家の支援で美術の高等教育を受けます。絵画と文学に興味を持ち画家を志すようになり、41歳で亡くなるまでの15年間になんと1,000点以上の作品を残します。

展覧会で見た画風の変遷を、心に残った作品を取り上げつつ、ド・スタールの人生と彼が残した手紙(言葉)を重ねながら私なりに考察していきます。

<参考文献>
「二コラ・ド・スタールの手紙」
「Nicolas de Staël / Musée d'Art Moderne de Paris」

【画家としての旅、ジャニーヌとの時代(1934年ごろ〜1947年)】
ベルギーで装飾・デザイン・建築を学んだ後、南フランス、スペイン、モロッコなど旅をしながら数々の芸術に触れ、そして描き始めます。
モロッコで後のパートナーとなる年上の画家ジャニーヌに出逢い、1940年からジャニーヌの連れ子と娘アンヌと4人で南仏ニースで、その後パリで暮らすことに。

アートと建築の旅 フランス 二コラ・ド・スタール展
1934「カシの眺め(南仏)」20歳


アートと建築の旅 フランス 二コラ・ド・スタール展
1941「ジャニーヌの肖像」26歳


最も初期の作品です。人物や風景など対象を忠実に表現しています。
ド・スタールらしさはまだ見られませんが、画力がありながら穏やかで温かい雰囲気がでています。

1946年、ジャニーヌが病気で亡くなってしまいます。

「すべてを与え、亡くなってもなお与え続けてくれる。」

ジャニーヌの母に宛てた手紙にこう記していることから、貧困時代を共に歩んだ最愛の人であり、精神的にも支えられていたことが分かります。

「ジャニーヌの肖像を何点か描き続け、いったい何を描いたのだろう。対象を写実的に描くことが窮屈に感じらてきた。自由な表現を模索していきたい。」

失意の中、表現は黒色を多用し、具象のその先にある抽象的な世界観に移っています。

アートと建築の旅 フランス 二コラ・ド・スタール展
1946-7「ダンス」32歳


【パリ・ゴーゲ通りのアトリエ時代(1947年〜1953年)】
ほどなく英語教師フランソワーズと結婚。1947年からパリのゴーゲ通りの光溢れるアトリエを拠点に、家族を養うために精力的に制作をしていきます。
マティエールはどんどん濃く、太く、油絵具をペインティングナイフで厚塗りし、色の重なりや色面で構成するスタイルに没頭している様子が分かります。
一方で色彩は、「黒の時代」を経て白色や明るい色が使われていくという変化も見てとれます。

「知性と素材の間には、とてもデリケートな知覚によって『美』に到達するまでに、なんとおびただしいコンポジション(構成)とデコンポジション(解体)が起こることか。」

美術評論家である友人に、そう打ち明けています。

私はこの時代のド・スタールらしい作風に最も感銘を受けてきましたが、改めてそれを確認することが出来ました。
抽象的なコンポジション(構成)が四角形を多用する技法に進化していき、風景画や花などの静物画にもリズム感があり軽やかさすら感じます。
明るい色を効果的に使っているのも、画家として、父親としての充実感の表れではないでしょうか。

アートと建築の旅 フランス 二コラ・ド・スタール展
1949「コンポジション」35歳


アートと建築の旅 フランス 二コラ・ド・スタール展
1952「花」38歳


ド・スタール愛用のパレットが展示されていました。
絵具箱をパレットにしていたようです。
絵具の量から、厚塗りに取り組んでいた彼の様子が浮かびます。

アートと建築の旅 フランス 二コラ・ド・スタール展

1949年ごろから、ド・スタールの認知度、評価は上がっていきます。
フランス政府が作品を買い上げたり、ニューヨーク、パリ、ロンドンで個展を開催したりと画家として認められてきます。
特に1950年のニューヨークでの展覧会は大成功を納め、大手ギャラリーと契約を結び、作品制作を促されるようになり生活が大きく変化していきました。
ニューヨーク近代美術館からのアンケートには次のように回答しており、画家としての自信と充実ぶりがうかがえます。

「私は絵画という材料を使って、ひとつのハーモニーを実現したいと思っている。私の理想は私の個性によって決定されています。」

その後、題材が風景や静物画からコンサート、バレエ、サッカーへと広がり、再び具象化していきます。

「そこで感じた衝撃、振動を表現したい。」

サッカーの試合を題材にした長辺3メートル以上ある大作です。色彩と色面の最小限の要素で、選手たちの躍動感を最大限に表現しています。

アートと建築の旅 フランス 二コラ・ド・スタール展
1953「パルク・デ・プランス」39歳


【南仏プロヴァンスのアトリエ時代(1953年〜1954年)】
充実した画家生活の中、南仏プロヴァンスのメネルブにある古城にアトリエを移します。

「無限の地平線を持つ楽園」

と友人に宛てた手紙に記しているほどお気に入りだったようです。
この地で友人の娘ジャンヌに雷鳴のような出逢いを果たします。

この時期の作品に最も変化を確認できるのは、色彩の明るさです。
テーブルの上のモノを全てブルーに、背景のオレンジと、テーブルのピンクの下に見え隠れする微かなオレンジが魅力的な作品。

アートと建築の旅 フランス 二コラ・ド・スタール展
1953「バラ色のテーブル」39歳


舟のある風景画。水面を光溢れるオレンジの色面で表現しています。構図が心地よいです。

アートと建築の旅 フランス 二コラ・ド・スタール展
1954「マルティーグ(南仏)」40歳


この頃の絵画は、マティエールがより軽く薄く、画風に流動性が出てシンプルになっています。

「僕はこんな彩り ―はかない色、あるものはありえないような輝かしい色、静かな色― を見たことはない。なんという喜び、なんという秩序。僕はとても幸福だ。」

ジャンヌとの出会いが心情に変化をもたらしたのだと想像できますが、南フランスを旅してきた私にとってピンクやオレンジを使う画家の視点に共感しました。きっとこの地の温かい気候や光がそうさせたのではと想像しました。

【アンティーブ(1954年〜1955年)】
ジャンヌを追って海沿いのアンティーブにアトリエを借ります。

「なんという少女、大地は感動で震える。」

インスピレ―ションを与えたと言われている最後に恋をしたジャンヌをモデルにした作品。

アートと建築の旅 フランス 二コラ・ド・スタール展
1954「横たわる青いヌード」40歳


アンティーブ期間は、徐々に不穏になるジャンヌとの関係や作品制作へのプレッシャーなのか、気持ちを反映しているように色彩の彩度が落ち着き、モノトーンやシックな作品が増えています。
ド・スタールはアトリエの絵をたくさん描いていますが、青で表現されたこの絵からは室内の温度や静けさを感じます。

アートと建築の旅 フランス 二コラ・ド・スタール展
1955「青い背景のアトリエの隅」


そして、最期の作品となる「コンサート」(パネル)
この絵はド・スタールが実際にコンサートに行った時の高揚感を描いた作品です。
彼の中で一番大きい長辺6メートルの大作は、残念ながらパリでも見ることが出来ませんでした。

「僕は持ちこたえられなくなり、考えに考えながら毎日筆を入れているのだが、いつもめまいのうちに終わる。」

パリとアンティーブでの展覧会を控え、極度に神経をすり減らし、この作品を描き終えることなくアトリエからアンティーブの海へ身を投げ亡くなってしまいます。

アートと建築の旅 フランス 二コラ・ド・スタール展
1955「コンサート」 絶筆
 (この記念碑的な作品は、アンティーブのアトリエに近いピカソ美術館に1986年より常設展示されています。)

「真の絵画は、常にあらゆる面、すなわち現在の瞬間と過去および未来の不可能な寄せ算に向かうものです。」

<展示を見終えて・・・>

私は、10代にド・スタールの画集に出会い、その中の作品を何度も見てきました。
その色使い、マティエール、グラフィカルな構図に魅せられてきました。
今回、多くの実物の作品を見て、それらが合わさって表現されている「独特のハーモニー」に確かに気づくことが出来ました。それはとても心地よく、ある種の抒情的な音楽のようなものでした。

具象から抽象へ、そして再び具象へと変化した稀有な画家として評されるド・スタールですが、今回の訪問と考察で、そういった表現方法の枠組みではくくれないものを私は感じ取りました。
変化ではなく進化。ジャンヌをモデルにしたヌードにも見られるように、人物画が風景画にも見えるところは、対象の本質的なものに着眼し、もっとスケールの大きいテーマを表現したかったのではないでしょうか。
それは最小限の要素で最大限の想像をさせる表現とも言えると思います。

そして、マティエールや色彩の変化は、「光」もあるのではと感じました。

「光が変わると物事に対する考え方が少し新しくなります。」

と彼自身も語っています。

アートと建築の旅 フランス 二コラ・ド・スタール展

最後に、ド・スタールがフランス人を惹きつける理由は、より深く納得できたような気がします。
作品に見られる具象と抽象の先の「普遍的な美しさ」、「洗練とモダン」のエッセンスは、アートへの関心と美意識が高いフランス人に評価されるものでしょう。

また、今回、ド・スタールの作品の変遷に、彼のドラマティックな人生 ―愛する人への想い、家族を養おうとする強さ、そして禁断の恋― を重ねて考察してみましたが、抽象的な作品にも人間的なものを感じ、絵が動的、立体的に見えました。

フランス映画の1シーンのように。



<Une petite pause“ちょっとひと休み”>

ミュージアムを出るとすっかり日が暮れていました。
セーヌ川の向こう岸にライトアップされたエッフェル塔。
旅も終わりが近づいてきました。

アートと建築の旅 フランス 二コラ・ド・スタール展



コンセプト ジュエリーワークス
デザイナー 橋本志織



-旅のブログ掲載中-
−アートと建築の旅@− フランス【マティス ロザリオ礼拝堂 / ヴァンス】
−アートと建築の旅A− フランス【マティス美術館 / ニース】
−アートと建築の旅B− フランス【国立ピカソ美術館・陶器美術館 / ヴァロリス】
−アートと建築の旅C− フランス【ピカソ美術館 / アンティーブ】
−アートと建築の旅D− フランス【ラ・トゥーレット修道院 / リヨン】
−アートと建築の旅E− フランス【ル・コルビュジエ ノートルダム・デュ・オー礼拝堂 / ロンシャン】
−アートと建築の旅F− フランス【マジョレル邸 ・ナンシー派美術館 / ナンシー】
−アートと建築の旅G− フランス【ル・コルビュジエ サヴォワ邸 / ポワシー 】


[お問い合わせ・ご予約]
03-5708-5043
www.concept-jw.jp











posted by CONCEPT JEWELRY WORKS at 15:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | 【SHIORI HASHIMOTO tabi-blog】

2025年01月25日

お気に入りとセットアップを楽しむステーションロングネックレスとブレスレット


お気に入りとセットアップを楽しむステーションロングネックレスとブレスレット

今回は、「華やかに、心地よく、お気に入りとセットアップを楽しむ」というお話です。

ご近所にお住まいの50代のお客様。
夏と冬に長いお休みをとって海外で過ごすライフスタイルを愉しまれています。

お持ちになったジュエリーはこちら。
お母様から譲り受けた1石のダイヤリングをリフォームしたペンダントと、長らく眠ったままの5石のダイヤジュエリー。
今まで利用したリフォーム店では、色んなデザインや着け方のアイデア・提案をしてくれなくてというお悩みも・・・。

お気に入りとセットアップを楽しむステーションロングネックレスとブレスレット

外国の方と接することの多いお客様に、もっとジュエリーを楽しんでいただきたい・・・。

まずは「華やかさ」。
お母様のダイヤをメインに、合計6石をアシンメトリーに散らして、ステーションロングネックレスをご提案。
これまでは50p前後のネックレスがお好きで着ける機会が多く、ロングのアイデアに少し驚かれていました。
石座の高さを最小限にしていますので、華やかでありながらさりげなく着けられます。
●DSC_1646-補正529.jpg
そして「心地よさ」。
ロングネックレスのもうひとつのメリットは、心地よく着けられること。
80pは金具の着け外しをすることなく頭からかぶれる長さなので、ストレスなく簡単に着けられます。

さらに「セットアップ」。
お気に入りのジュエリーをヒアリングさせていただく中で、パートナーの方から50歳の記念にプレゼントされた“ティファニーT”のネックレスをとても大切に着けられているとのこと。
ロングネックレスは、重ねて着けることで、そのデザインをより引き立たたせるような長さ、ダイヤの配置を考えました。

お気に入りとセットアップを楽しむステーションロングネックレスとブレスレット

セットアップは、さらに手もとにも。
すっかり楽しくなられたご様子で、この機会にジュエリーボックスを見直し、
「使っていないピアスのダイヤでブレスレットが出来ないですか。」とのご相談。
海外ではブレスレットを着けている女性が多く、印象的で素敵なのだそう。

加工前のピアス
お気に入りとセットアップを楽しむステーションロングネックレスとブレスレット

ロングネックレスと素敵に合わせられるよう、同じ石座のステーションデザインでお作りしました。
こちらはシンメトリーで。

お気に入りとセットアップを楽しむステーションロングネックレスとブレスレット

お気に入りのジュエリー、お母様から受け継いだダイヤ、そして着けるのが楽しくなるセットアップスタイル。

早速、次の旅にご一緒していただけるそうで、ワクワクしますね。

お気に入りとセットアップを楽しむステーションロングネックレスとブレスレット

今回お手伝いしてとても嬉しかったのは、お客様がリフォームやジュエリーを着けることがどんどん楽しくなっていくのを感じさせていただけたことです。

ひとりでも多くの方にそう感じていただけたら幸いです。
お気軽にご相談ください。


コンセプト ジュエリーワークス
デザイナー 橋本志織



-旅のブログ掲載中-
−アートと建築の旅@− フランス【マティス ロザリオ礼拝堂 / ヴァンス】
−アートと建築の旅A− フランス【マティス美術館 / ニース】
−アートと建築の旅B− フランス【国立ピカソ美術館・陶器美術館 / ヴァロリス】
−アートと建築の旅C− フランス【ピカソ美術館 / アンティーブ】
−アートと建築の旅D− フランス【ラ・トゥーレット修道院 / リヨン】
−アートと建築の旅E− フランス【ル・コルビュジエ ノートルダム・デュ・オー礼拝堂 / ロンシャン】
−アートと建築の旅F− フランス【マジョレル邸 ・ナンシー派美術館 / ナンシー】
−アートと建築の旅G− フランス【ル・コルビュジエ サヴォワ邸 / ポワシー 】


[お問い合わせ・ご予約]
03-5708-5043
www.concept-jw.jp











posted by CONCEPT JEWELRY WORKS at 16:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | 【order NECKLACE】

2025年01月10日

時代を超える美しさ・デザインを目指して


あけましておめでとうございます。
デザイナーの橋本です。

皆さま、どのような新年を迎えられましたか?
本年も、アートな感性や既成概念にとらわれないたくさんのアイデアで、皆さまのジュエリーライフがもっと楽しくハッピーになりますように、お手伝いさせていただきます。

昨年は、「今のあなたをキリトル。」をコンセプトに、当ギャラリーで11月に大社優子さんの移動写真館を開催しました。
当店のお客様では、以前制作させていただいたジュエリーを素敵に装って撮影にのぞまれた方もいらっしゃいました。

移動写真館は今年も秋に開催予定です。さらに、皆さまにお会いし、たくさんお話しできるような新たなイベント企画を考えていますので、どうぞお楽しみに。

そんな新企画のアイデアを求めて、年始のお休みに静岡に行ってまいりました。
目指したのは、「芹沢_介美術館」です。

時代を超える美しさ・デザインを目指して

周辺の自然と溶け込むように石を積み上げた平屋建築は、建築家・白井晟一が手がけ「石水館(1981)」と名づけられました。白井は、渋谷区松濤美術館を設計したことでも知られています。

時代を超える美しさ・デザインを目指して

型絵染の人間国宝、染色家・芹沢_介(1895−1984)は、日々の暮らしを楽しく彩る作品を数多く生み出した日本の「民藝」を代表する作家のひとりです。
作品には、のれん、屏風、着物、帯、うちわなど、また染色に留まらず装丁、陶器の絵付け、看板・照明のデザインなどがあります。

時代を超える美しさ・デザインを目指して
「御滝図のれん」紬に型染 1962

IMG_9974-529.jpg
「酒悦マッチボックス」1955


今もなお色褪せない斬新でモダンなデザインでありながら心温まる芹沢作品。
どの作品にも愛をもって向かい合う姿勢が感じられ、永く多くの人に親しまれる理由が分かります。

館内の様子です。
木の組天井とアーチの窓枠が印象的でした。

時代を超える美しさ・デザインを目指して
(芹沢_介美術館 HPより)


美術館のそばにある芹沢_介の家も見学してきました。
芹沢が集めた日本をはじめ世界中の工芸品や家具を見ることができます。
芹沢作品の「もうひとつの創造」を垣間見ることが出来ました。

時代を超える美しさ・デザインを目指して

リビングの奥には作業机がありました。
染色は、絵師・彫師・染師に職人が分かれるのがスタンダードですが、芹沢は作品の全工程を自ら手がけていたと言われています。
この机でアイデアが生まれ、絵を描き、型を彫り、楽しんで作業する姿を想像しました。

時代を超える美しさ・デザインを目指して

アートな感性を存分に刺激され、たくさんのヒントをいただく訪問となりました。
新しい企画については、折に触れてまたご報告させていただきますね。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

時代を超える美しさ・デザインを目指して


コンセプト ジュエリーワークス
デザイナー 橋本志織



-旅のブログ掲載中-
−アートと建築の旅@− フランス【マティス ロザリオ礼拝堂 / ヴァンス】
−アートと建築の旅A− フランス【マティス美術館 / ニース】
−アートと建築の旅B− フランス【国立ピカソ美術館・陶器美術館 / ヴァロリス】
−アートと建築の旅C− フランス【ピカソ美術館 / アンティーブ】
−アートと建築の旅D− フランス【ラ・トゥーレット修道院 / リヨン】
−アートと建築の旅E− フランス【ル・コルビュジエ ノートルダム・デュ・オー礼拝堂 / ロンシャン】
−アートと建築の旅F− フランス【マジョレル邸 ・ナンシー派美術館 / ナンシー】
−アートと建築の旅G− フランス【ル・コルビュジエ サヴォワ邸 / ポワシー 】


[お問い合わせ・ご予約]
03-5708-5043
www.concept-jw.jp








posted by CONCEPT JEWELRY WORKS at 15:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | [SHIORI HASHIMOTO]

2024年12月26日

花咲く時代のジュエリーに想いを重ねて


花咲く時代のジュエリーに想いを重ねて


本年最後の事例紹介は、少し時代を振り返りながら。

お近くに実家があり、お父様に会いにいらした際に1階喫茶室にお立ち寄りくださるミセスのお客様。
2階にジュエリーアトリエがあることを知り、ご実家にあった手つかずのジュエリーボックスを整理整頓する機会になったそうで、50年以上眠っていたお祖母様のリングのリフォームをご相談くださいました。

こちらが加工前のオパールリング
花咲く時代のジュエリーに想いを重ねて

リメイクのご相談でダイヤの婚約指輪の次に多いのが、大きなマーキーズカットかオーバルカットの色石が決まって縦長にレイアウトされているこのデザインです。

背景を調べましたら、昭和30年(1955年)頃に大変流行したデザインで、オパールの他、鮮やかな色の合成宝石でもたくさん作られました。
戦後10年経ち、和装から洋装へ、アメリカンスタイルやディオールのニュールックなどが女性の心をつかみ、おしゃれに目覚めファッションが花開いた時代、当時の女性たちにとって大きな石のリングを着けることは、最高のおしゃれだったのではと想像します。
お祖母様も新しい時代のファッションを謳歌されていたことでしょう。

花咲く時代のジュエリーに想いを重ねて

ご希望は、
「普段やお出かけの時に着けられる華やかでモダンなデザインに変えたい。」

お客様の雰囲気にあわせ、左手薬指に着けるアシンメトリーのモダンデザインをご提案。
「オパールの相棒には、淡いトーンのカラーストーンをあしらって欲しい。」
ともリクエストをいただきました。
トパーズやトルマリンも考えましたが、カラーサファイア(オレンジ、イエロー、グリーン、ブルー、ヴァイオレット、ピンク)の色合いとトーンがオパールとあわせると、派手過ぎず地味過ぎず良いバランスでしたので、6石をバーに配しました。

花咲く時代のジュエリーに想いを重ねて

花咲く時代のジュエリーに想いを重ねて

もう一点。
ジュエリーボックスに一緒に眠っていたアール・デコデザインのホワイトゴールドの帯留兼ブローチ。
ブローチとして洋装にも使えるところが、時代を映していると思いました。
お祖母様はどんなお洋服に合わせていらしたのでしょうか。

花咲く時代のジュエリーに想いを重ねて

こちらは、美しいデザインはそのままに、ブローチ金具の受けを新しいパーツ(金色部分)に交換し、もう一度ブローチで存分に楽しめるようにしました。

花咲く時代のジュエリーに想いを重ねて

今から約70年前のジュエリーたち。
女性たちが憧れの服を家庭でお裁縫し洋装でおしゃれを楽しんだ時代。
ジュエリーを合わせながら新しいスタイルを楽しむ当時の女性たちの気持ちに想いを重ねました。
2025年もみなさまの「おしゃれを楽しむ気持ち」をジュエリーで盛り上げていきたいです。

ジュエリーを身に着けてより心豊かに!


コンセプト ジュエリーワークス
デザイナー 橋本志織



-旅のブログ掲載中-
−アートと建築の旅@− フランス【マティス ロザリオ礼拝堂 / ヴァンス】
−アートと建築の旅A− フランス【マティス美術館 / ニース】
−アートと建築の旅B− フランス【国立ピカソ美術館・陶器美術館 / ヴァロリス】
−アートと建築の旅C− フランス【ピカソ美術館 / アンティーブ】
−アートと建築の旅D− フランス【ラ・トゥーレット修道院 / リヨン】
−アートと建築の旅E− フランス【ル・コルビュジエ ノートルダム・デュ・オー礼拝堂 / ロンシャン】
−アートと建築の旅F− フランス【マジョレル邸 ・ナンシー派美術館 / ナンシー】
−アートと建築の旅G− フランス【ル・コルビュジエ サヴォワ邸 / ポワシー 】


[お問い合わせ・ご予約]
03-5708-5043
www.concept-jw.jp








posted by CONCEPT JEWELRY WORKS at 17:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | 【order RING】

2024年12月10日

−アートと建築の旅G− フランス【ル・コルビュジエ サヴォワ邸 / ポワシー 】Le Corbusier Villa Savoye / Poissy 1931


デザイナーの橋本です。
昨年末から今年の年始に訪れたフランス旅行の終盤はパリに滞在し「アートと建築の旅」の締めくくりともいえる見学を行いました。

ナンシーでエミール・ガレら芸術家と職人たちの「生活に芸術を取り戻そう!」というアール・ヌーヴォー思想の誕生を実感した私は、アートと建築に関する当時のもうひとつの大きな流れにも関心がありました。

それは産業革命以降の工業的発展を肯定的に捉えながらも、それでいて美しくあるべき、と主張した「ピュリスム(純粋主義)」という考え方です。
この運動の中心になったのがル・コルビュジエで、その思想のもと設計されたのがパリ郊外ポワシーにある「サヴォワ邸」です。

パリから急行列車で30分、登り坂を20分歩くと「Villa Savoye」の標識。
新年を迎えたパリ近郊は気温が下がりずっと雪模様。この日は曇りでしたが、前日までの雪が残っていました。

アートと建築の旅Gフランス【ル・コルビュジエ サヴォワ邸 / ポワシー 】

サヴォワ邸は、広大な敷地の森に囲まれた丘に、週末に滞在する別荘として建てられました。
散歩道のような木々の間を抜けると・・・

アートと建築の旅Gフランス【ル・コルビュジエ サヴォワ邸 / ポワシー 】

教科書で見た青空と芝生とのコントラスト!ではなく、真っ白な今まで見たことのない表情のサヴォワ邸が現れました。

アートと建築の旅Gフランス【ル・コルビュジエ サヴォワ邸 / ポワシー 】

コルビュジエは40代に入り、友人の画家と出版社を作り総合文化誌『レスプリ・ヌーヴォー』を創刊。建築や絵画などの新しい価値観を提示することに努めました。(この頃の身分証には文筆業と記されており、文章で伝えることに重きを置いていたことがうかがえます。)

著書内で「ドミノシステム」や「近代建築5原則」を考案・提唱し、画家としても「ピュリスム」を宣言、頭角を現していきます。

「ピュリスム」(純粋主義)とは、絵画で言えば、対象を幾何学的な形態に単純化し、さらに規整線を用い、黄金比や正方形を基準にした厳格な構図で表現するという手法です。(絵画の規整線が建築の人体尺モデュロールへ発展していきます。)

アートと建築の旅Gフランス【ル・コルビュジエ サヴォワ邸 / ポワシー 】 
コルビュジエ「積み重ねられた皿と本の静物画」1920


サヴォワ邸は、そんなコルビュジエがまさにチャレンジ精神にあふれていたであろう41歳の時の仕事です。
装飾をそぎ落とした幾何学的なデザイン、ガラス材、鉄筋コンクリートなどの新素材の使用など、近代建築に対する考えを具現化した象徴的な作品といえます。

またサヴォワ邸は「建築的プロムナード」として知られる構成で、スロープが重要な役割を担い、横と縦の視点の移動を可能にしています。

まさに建物内を散策路のように歩いてコルビュジエの精神を体感出来ます。
エントランスから。
1F “ピロティ(柱)”部分は、3台の車庫、運転手・使用人の部屋、ランドリールームがあります。
スロープをのぼり2Fへ。

アートと建築の旅Gフランス【ル・コルビュジエ サヴォワ邸 / ポワシー 】

2Fにはリビング、寝室・浴室、子供部屋、キッチン、“屋上庭園”があります。
リビングと庭園は、全面ガラスの効果で、自然の中に身を置いているような解放感があります。

アートと建築の旅Gフランス【ル・コルビュジエ サヴォワ邸 / ポワシー 】

建物の荷重が柱で支えらるようになったことで、外壁は“水平連続窓”の設計など“自由な立面”を可能にし、間仕切りの内壁はなく“自由な平面(間取り)”を実現しています。
壁を水色とピンク色に分け、ダイニングとリビングを視覚的に区別しています。

アートと建築の旅Gフランス【ル・コルビュジエ サヴォワ邸 / ポワシー 】

螺旋階段がフロアの中心にあります。
直線とのコントラストが美しくまるで彫刻作品。

アートと建築の旅Gフランス【ル・コルビュジエ サヴォワ邸 / ポワシー 】

浴室とその奥に寝室。
入浴中にくつろぐソファの形は、コルビュジエの名作椅子「LC4/シェーズ・ロング」を連想させます。

アートと建築の旅Gフランス【ル・コルビュジエ サヴォワ邸 / ポワシー 】

スロープで最上階のテラスへ。
半球型の防風壁は、1F “ファサード”で見た緑色の車庫のカーブと呼応しています。

アートと建築の旅Gフランス【ル・コルビュジエ サヴォワ邸 / ポワシー 】

プロムナードのゴールは、ソラリウムにある「壁に開けられた窓」。
セーヌ川の美しい景色を1枚の絵画のように堪能できます。

見学を終えて、計算しつくされた幾何学のデザインや、美しい比率で構成された部屋や窓などの設計は、まるでピュリスム絵画の中を実際に歩いているような心地よい感覚をおぼえました。

IMG_2290-529.jpg

サヴォワ邸は、芸術が人間に作用するものとして、その関係性を造形を通して探求し続けたコルビュジエの芸術的思考が強く感じられる作品でした。

工業化のうねりに反動するかのように自然との共生を匠の手仕事で実現したナンシー派に対し、工業的発展の流れにのりながら、新たな手法を模索し機能性を追求していったコルビュジエらのピュリスム。
表現は全く違えど根底は、どちらも生活をより良く美しく豊かにという想いは同じだと実感しました。

アートと建築の旅Gフランス【ル・コルビュジエ サヴォワ邸 / ポワシー 】

今回の旅で、コルビュジエの3作品
・サヴォワ邸(1931年、44歳)
・ロンシャン礼拝堂(1955年、68歳)
・ラ・トゥーレット修道院(1960年、73歳)
を見ることができました。

ピュリスムを経て、コルビュジエは「人間と自然との調和」を新たなテーマにし、絵画だけでなく、タピスリー、壁画、彫刻、モニュメント、版画作品の制作にも取り掛かります。
建築家としての飛躍と同時に、芸術家としても成熟していき、晩年「ロンシャン礼拝堂」、「ラ・トゥーレット修道院」へと辿り着くのです。

3ヶ所の訪問で、幸運にもコルビュジエの人生の変遷をたどることとなりました。
深い探求心と挑戦的な精神が様々な表現を手にしていき、より自由に建築と芸術の密接な関係を築くことになり、その結果、相互が融合した素晴らしい作品へ結実していったのだと感じました。

アートと建築の旅Gフランス【ル・コルビュジエ サヴォワ邸 / ポワシー 】



<Une petite pause“ちょっとひと休み”>

パリは公現祭シーズン。
「ガレット・デ・ロワ」(王様の菓子)が街の至るところに並んでいました。
パイの中に隠れているフェ―ヴ(陶製の小さな人形)が自分のピースに入っていたら1年間幸運に恵まれます。
いつか家族でやってみたい!

アートと建築の旅Gフランス【ル・コルビュジエ サヴォワ邸 / ポワシー 】

コンセプト ジュエリーワークス
デザイナー 橋本志織



-旅のブログ掲載中-
−アートと建築の旅@− フランス【マティス ロザリオ礼拝堂 / ヴァンス】
−アートと建築の旅A− フランス【マティス美術館 / ニース】
−アートと建築の旅B− フランス【国立ピカソ美術館・陶器美術館 / ヴァロリス】
−アートと建築の旅C− フランス【ピカソ美術館 / アンティーブ】
−アートと建築の旅D− フランス【ラ・トゥーレット修道院 / リヨン】
−アートと建築の旅E− フランス【ル・コルビュジエ ノートルダム・デュ・オー礼拝堂 / ロンシャン】
−アートと建築の旅F− フランス【マジョレル邸 ・ナンシー派美術館 / ナンシー】


[お問い合わせ・ご予約]
03-5708-5043
www.concept-jw.jp








posted by CONCEPT JEWELRY WORKS at 16:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | 【SHIORI HASHIMOTO tabi-blog】

2024年11月26日

ご祖父様の形見をリメイクして胸に、ピアスに。


ご祖父様の形見をリメイクして胸に、ピアスに。

ご祖父様の形見をリメイクして胸に、ピアスに。

20代のお客様、お母様と一緒にご祖父様の形見を2点お持ちになり、
「大好きだったおじいちゃんの形見を身に着けたい。」
とご相談くださいました。

こちらがお持ちになった裸婦のレリーフのタイクリップ。
校長先生だったご祖父様は美術の担任をされていたこともあり、彫刻家の友人の作品を集めていて、実家や自宅の庭には色々なポーズの裸婦像がたくさんあるそうです。(美術館のようですね。)
このデザインを身に着けていたご祖父様、きっとユニークで素敵な先生だったんでしょうね。

ご祖父様の形見をリメイクして胸に、ピアスに。

裸婦のポーズがマティスのブルーヌードのようでとても美しいと思いました。
より躍動感が出るよう心地よく、斜めにしたデザインをご提案しました。
アート作品らしく、新たにプラチナで額縁のようにフレームを作りペンダントへ。
今回は、26歳の誕生日にお母様からのプレゼントだそうで、この先色々なペンダントトップで楽しめるように、長さ調整出来るプラチナのチェーンをあわせてお作りしました。

ご祖父様の形見をリメイクして胸に、ピアスに。

カフスはウェッジウッド製。
カフスなので、ホワイトライオンは同じ方向を向いています。

ご祖父様の形見をリメイクして胸に、ピアスに。

通常ピアスやイヤリングは、着けた時に同じ見え方になるよう、絵やデザインが左右反転しているものが多いですが、リメイクしたピアスは、着けるとホワイトライオンは左右の耳で向きが異なります!それがご祖父様との想い出に、また新たなストーリーになって良いと思いました。

ご祖父様の形見をリメイクして胸に、ピアスに。"

ご祖父様の形見をリメイクして胸に、ピアスに。

こちらは1周忌に間に合うようお届けさせていただきました。
デザインを考える時、加工をお待ちいただく間、親子でご祖父様の想い出話をするようになり、初めて知ったこともたくさんあった。とお教えくださいました。
ご祖父様もきっとお喜びになっていらっしゃる気がして、ご家族にとって良い機会になられたと感じ、嬉しい気持ちになりました。

もとのデザインを最大限活かしながらアイテムを替えるリメイク。
ぜひご相談ください。

コンセプト ジュエリーワークス
デザイナー 橋本志織



-旅のブログ掲載中-
−アートと建築の旅@− フランス【マティス ロザリオ礼拝堂 / ヴァンス】
−アートと建築の旅A− フランス【マティス美術館 / ニース】
−アートと建築の旅B− フランス【国立ピカソ美術館・陶器美術館 / ヴァロリス】
−アートと建築の旅C− フランス【ピカソ美術館 / アンティーブ】
−アートと建築の旅D− フランス【ラ・トゥーレット修道院 / リヨン】
−アートと建築の旅E− フランス【ル・コルビュジエ ノートルダム・デュ・オー礼拝堂 / ロンシャン】
−アートと建築の旅F− フランス【マジョレル邸 ・ナンシー派美術館 / ナンシー】


[お問い合わせ・ご予約]
03-5708-5043
www.concept-jw.jp








posted by CONCEPT JEWELRY WORKS at 17:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | 【order PENDANT】

2024年11月17日

−アートと建築の旅F− フランス【マジョレル邸 ・ナンシー派美術館 / ナンシー 】Villa Majorelle 1902・Musée de l'École de Nancy 1964 / Nancy


デザイナーの橋本です。
年末年始に訪れたフランス「アートと建築の旅」。
次の目的地は、ディジョンから高速列車で北へ1時間半、いよいよ芸術の都・パリに入ります!
旅の後半は、パリを拠点にアートと建築を堪能しました。

アートと建築の旅Fフランス【マジョレル邸 ・ナンシー派美術館 / ナンシー】

パリの宿に一旦トランクを置き、東駅から再び高速列車に乗りさらに東へ1時間半。
移動日の半日を使ってもどうしても行きたい場所がありました。
フランス北東部ロレーヌ地方、「アール・ヌーヴォー」が生まれたナンシーです。

「アール・ヌーヴォー」とは、19世紀末からヨーロッパを中心に花開いた新しい芸術運動です。自然界をモティーフにした有機的で自由な曲線構成と、鉄やガラスなどの当時の新素材の起用が特徴です。

産業革命による大量生産の反動で起こったウィリアム・モリス(イギリス)のアーツ・アンド・クラフツ運動を筆頭に「社会と生活に芸術を取り戻そう!」という思想がヨーロッパ各地へ広まり、アール・ヌーヴォーとして結実し、そしてアール・デコ、モダニズムへつながります。

私は、学生の頃からオーストリアやベルギー、フランス、スペインをめぐり、アール・ヌーヴォー様式の建築、工芸、美術、グラフィックなどの作品に数多く触れてきましたが、この装飾的で高度にデザインされた表現方法がいかにして、また、なぜこの地で生まれたのか、それを知りたくてナンシーを目指したのです。

駅を出ると、目の前に広がる古い街並みにタイムスリップしたような感覚と同時に、ワクワクする気持ちがわいてきます。

アートと建築の旅Fフランス【マジョレル邸 ・ナンシー派美術館 / ナンシー】
標識に「Art Nouveau」の文字!


はじめにナンシー派美術館へ。
ナンシー派(L'École de Nancy)とは、ガラス工芸デザイナーであり植物学者でもあるエミール・ガレをリーダーに、ナンシーの芸術家と職人が手を取り合い、手工芸・芸術・教育など、地元の産業と文化の振興を目的として作られた同盟です。

アートと建築の旅Fフランス【マジョレル邸 ・ナンシー派美術館 / ナンシー】

こちらの部屋では、当時の雰囲気がそのまま再現されています。
天井から照明、家具、調度品に至るまですべてが緻密にデザイン、創作されています。

アートと建築の旅Fフランス【マジョレル邸 ・ナンシー派美術館 / ナンシー】

館内には数多くのエミール・ガレの作品が展示されており、彼の創作の変遷と研究の軌跡を辿れます。
こちらはガレにはめずらしい雰囲気の陶芸作品。
右端に愛らしいサルがひっそりと。。

アートと建築の旅Fフランス【マジョレル邸 ・ナンシー派美術館 / ナンシー】
「エミール・ガレ 猿の装飾皿」1880年頃


最も感動した作品。
モティーフが動植物ではなくグラフィカル。細かな美しい絵付けに目が釘づけになります。

アートと建築の旅Fフランス【マジョレル邸 ・ナンシー派美術館 / ナンシー】
「エミール・ガレ ペルシャ騎士の箱」1882年頃


続いて、美術館から少し歩いてマジョレル邸へ。
マジョレル邸をデザインしたルイ・マジョレルは、家具職人・金属工芸家でした。
建築、家具、金属、ステンドガラス・タイル(陶)などの内装は、すべて彼の仲間たちであるナンシー派の芸術家や職人たちとの技術と叡智の結集です。

アートと建築の旅Fフランス【マジョレル邸 ・ナンシー派美術館 / ナンシー】

エントランス。
手すり、庇や窓柵のモティーフに金属工芸の技が光ります。
特に手すりの優美でのびやかな曲線にしびれました。

アートと建築の旅Fフランス【マジョレル邸 ・ナンシー派美術館 / ナンシー】

内装には木材がふんだんに使われ温かい雰囲気。家具はすべてマジョレル氏自身によるものです。炎が燃えているようなひときわ存在感をはなっている暖炉は陶芸家の作品です。

アートと建築の旅Fフランス【マジョレル邸 ・ナンシー派美術館 / ナンシー】

優しい曲線に囲まれた室内テラス。
壁はすべて陶製のタイルです。

アートと建築の旅Fフランス【マジョレル邸 ・ナンシー派美術館 / ナンシー】

階段と手すりとペンダントライトが奏でる曲線と装飾のハーモニーは、アール・ヌーヴォー様式の真骨頂。
美しいステンドガラスは、当時人気のガラス工芸家によるもの。

アートと建築の旅Fフランス【マジョレル邸 ・ナンシー派美術館 / ナンシー】

邸内からエントランスを眺めます。
可愛いモティーフはルナリアの花です。壁や床にも花が広がり、空間全体に抒情的な印象をもたらします。

アートと建築の旅Fフランス【マジョレル邸 ・ナンシー派美術館 / ナンシー】

2ヶ所の訪問を終え、ここで感じた空間の雰囲気や、出逢った多くの作品から私の心に残ったのは「情熱と喜び」です。
「生活を芸術に!」を胸に、新しい素材や表現方法に果敢に挑んだ芸術家たちの情熱と、この街を愛する職人たちの丁寧な手仕事が、創作を芸術の域に高めていった様子が浮かびます。
ナンシーは、周辺の区域がドイツ領になる中、フランス領に留まったそうです。
その喜びが、より自然との共生を深め、芸術性を高めたのかもしれません。

アートに携わる者の一人として、この地に立てたことに、そして力強いエネルギーをいただけたことに感謝の気持ちがじわりとわいてきました。

アートと建築の旅Fフランス【マジョレル邸 ・ナンシー派美術館 / ナンシー】


<Une petite pause“ちょっとひと休み”>

パリからナンシーに向かう行きの高速列車でのひとコマ。
何らかの理由で1時間くらい停車中。
ドアは開け放たれ、皆さん、野原で犬と散歩したり、子供は走ったりと長めのブレイクタイム。
もしかして、慣れっこ?
私は、ナンシーに無事たどり着けるか不安でいっぱい。。

アートと建築の旅Fフランス【マジョレル邸 ・ナンシー派美術館 / ナンシー】



コンセプト ジュエリーワークス
デザイナー 橋本志織








posted by CONCEPT JEWELRY WORKS at 16:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | 【SHIORI HASHIMOTO tabi-blog】