デザイナーの橋本です。
年末年始に長めのお休みをいただきフランスを旅行しました。
現地で見たり、心動かされたことを、私のライフワークであるアートをテーマに、様々な建築とあわせ、このブログを借りて不定期でご紹介していきます。
旅の初日に訪れたのは南フランス。
美術を学び、探求している者として、ピカソやシャガール、マティスが愛した南フランスは訪れたい憧れの場所のひとつ。
目指したのは、ヴァンスにあるマティスのロザリオ礼拝堂です。
マティス自身が「光が長く差し込む冬の午前11時が最も美しい。」と語っていましたので、その時間に合わせて訪ねました。

海岸線のニースからバスに揺られて小一時間で山あいのヴァンスへ。
旧市街から礼拝堂まではゆるやかな登り坂を徒歩で20分くらい。地中海を見下ろすヴァンスの街並み、写真中央の白壁に青い屋根の礼拝堂を目指します。
年の瀬とはいえ、ゆったりとした時間が流れます。陽光温かく、上着がいらないくらいの気候。

ロザリオ礼拝堂は、マティスが最晩年、建築、ステンドグラス、壁画、家具、十字架、司祭服などすべてを手がけた礼拝堂です。礼拝堂自体が総合芸術で、マティスの集大成といわれています。
設計監修はル・コルビュジエの師であるオーギュスト・ペレが担当。
コンクリートのシンプルな形の礼拝堂です。

(Chapelle du Rosaire HPより)
隣接するミュージアムの窓からは、目の前に礼拝堂のあざやかな青い屋根。その向こうに見える三角屋根は修道院です。

礼拝堂の入り口と十字架、そして修道院。
十字架は12メートルもあるそうです。

礼拝堂内部は、撮影が制限されていますので、ホームページなどから写真を借りながらご紹介しますね。
室内に入った第一印象は、その明るさ。礼拝堂に抱いていたイメージとかけ離れていました。
いかにもマティスらしいデザインのステンドグラスから入る光が、床や壁のタイル画へ混ざり合いながらたゆたい、空間全体が色と光で満たされ、とても穏やかで温かな空気に包まれていました。

(Musée Matisse HPより)
時間の経過によって、刻々と変化する光の戯れの美しさは、小さな奇跡を目撃しているような、建物がまるで生きているようでした。

(Musée Matisse HPより)
マティスがたどり着いた、集大成ともいえる「光の礼拝堂」。
地中海の温かで幸せな気持ちにさせてくれる陽光との関係が、この礼拝堂の最大の魅力だと感じました。
画家ならではの光のとらえ方、マティスの人となりが表れているようなあたたかな礼拝堂でした。
私にとっても、「光」について深く考えさせられる訪問となりました。
礼拝堂のテラスから。
きれいな冬の青い空に、ヨーロッパ特有の幾筋もの飛行機雲。

ただいま東京・国立新美術館で、ロザリオ礼拝堂を再現。
日の出から日没までの一日を体感することが出来ます。
ご興味ある方はぜひ。
「マティス 自由なフォルム」(国立新美術館・5月27日まで開催中)<Une petite pause“ちょっとひと休み”>
旧市街に戻り美味しそうなお肉屋さんを発見。
ジャガイモと栗とマッシュルーム、ジャガイモのゴルゴンゾーラグラタンを買い、青空の下でひと休み。温めてくださり、優しさと笑顔もいただきました。

コンセプト ジュエリーワークス
デザイナー 橋本志織