2024年08月30日

想い出のスタールビー


想い出のスタールビー

今回は、35年間じっと出番を待っていたスタールビーのお話です。

ご相談いただいたのは、お近くにお住まいの60代のお客様。
35年前、10歳年上の商社にお勤めのお兄様がスリランカ出張の際、
「私の誕生石のルビーを買ってきて。」
とお願いしたそう。

こちらがそのスタールビー

想い出のスタールビー

宝石の国・スリランカで採れる輝石の中でもルビーは特別とされています。
さらにスタールビーは、キラキラする多角的なファセットカットと違い、ドーム形のカボションカットに、光の反射でスターのような6本の光の線が現れるもので、艶や色を楽しむルビーです。

スリランカから旅をしてきたこのスタールビーは特別で、いつかスペシャルなものにしたいという想いを長年育まれてきました。
そして、当店でリメイクやお持ちのジュエリーのメンテナンスなどのお付き合いをさせていただく中で、今回お誕生日のタイミングでご用命くださいました。

デザインのポイントは、
・お客様の個性に合わせ、イタリアンジュエリーのエッセンスを取り入れ、ゴージャスに。
・スリランカから旅をしてきたスタールビーをより魅惑的に。
・お持ちの個性的なデザインのジュエリーに合わせられるように。

ぽってりとボリュームのある3連構造で、センターラインのダイヤがスタールビーの下を渡ります。
楕円形と真円で構成し、指に着けると立体的に見えます。
プラチナとゴールドのコンビネーションカラーが、コーディネートの幅を広げてくれます。

想い出のスタールビー

ファッションや会話のセンスが良く大好きだったお兄様との想い出のスタールビー。
35年を経て装い新たにジュエリーとなりお客様の指にとまりました。

想い出のスタールビー

優しく微笑むお兄様のお顔が浮かびますね。


コンセプト ジュエリーワークス
デザイナー 橋本志織





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2024年08月14日

−アートと建築の旅D− フランス【ル・コルビュジエ   ラ・トゥーレット修道院 / リヨン】Le Corbusier Couvent de la Tourette / Lyon 1959


デザイナーの橋本です。
年末年始に訪れたフランス「アートと建築の旅」。
旅の序盤はしばらく南仏のニースに滞在し、マティス、ピカソ、ド・スタールの作品に、そして彼らが過ごした街を巡り、その心に触れることが出来ました。
続いて内陸、北へ行き先を変え、まず立ち寄ったのは川と美食の街・リヨンです。
ニースから高速列車で約5時間の移動。

アートと建築の旅D フランス ル・コルビュジエ   ラ・トゥーレット修道院 / リヨン
ソーヌ川とローヌ川が流れるリヨンの街並み


リヨン滞在中のテーマは、「建築の探求」。
私は高校から美術を学び、主に平面のアートをライフワークとしてきましたが、ジュエリーの世界への扉を開いてくれたのは、大学時代に出逢った建築家のヨーゼフ・ホフマン(オーストリア、1870−1956)です。
彼が手がけた建築物はもとより、デザイン・制作されたジュエリーや生活に関わるプロダクトは、私の想像の翼を大きく広げてくれました。
様々な建築家の作品にも興味をもつことになり、今後もジュエリーの制作のためにも、デザインに限らずその構造を考えるうえで探求を続けたいと思っています。

アートと建築の旅D フランス ル・コルビュジエ   ラ・トゥーレット修道院 / リヨン

目指したのは、リヨン郊外にあるル・コルビュジエの「ラ・トゥーレット修道院」。
リヨンから電車で50分、最寄駅から坂道を30分歩くと静かな森の中に現れます。
すでにル・コルビュジエ建築の雰囲気を存分にまとっています。

アートと建築の旅D フランス ル・コルビュジエ   ラ・トゥーレット修道院 / リヨン
手前の建物が四角い囲いの中に鐘のある礼拝堂


フランス国内には、世界遺産に登録されているル・コルビュジエの建築作品が10点ほどあり実際に見ることが出来ます。
ル・コルビュジエは、近代建築の礎を築いたひとりで、それまでの古典様式的な建築からコンクリートやガラスを使用した革新的で自由で開放的な住空間、いわゆるモダニズム建築を世界に広める運動に尽力し、日本の多くの建築家にも影響を与えました。

樹木のような柱が支えるコンクリートの直線的な建物が修道院です。
高い丘の斜面に沿うように建てられていますが、そのピロティ(柱)構造が彼の代名詞ともいえる建築手法です。
そのおかげで眼下にリヨンの美しい街並みを眺めることが出来ます。

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今でも修道院として使われている施設ですが、ガイド付きツアーのみ見学が許されていましたので参加してきました。5階建てのうち2階、3階のみ内部を見ることが出来ます。

アートと建築の旅D フランス ル・コルビュジエ   ラ・トゥーレット修道院 / リヨン
ツアー参加者は、建築学科の学生さんなど30名位、子供たちもいました。


3階食堂は、開放的で明るい雰囲気。
太い円柱と、両側の壁の全面に施されたガラス窓が効果的です。
左側は「波動式ガラス壁」、右側は「モンドリアン・パネル」といい、その比率や効果が緻密に計算された手法によるものです。
窓からは自然豊かな景色が一望出来、穏やかな心もちになりますし、ひとつひとつの窓から差し込む光がリズミカルで絵画的な印象も受け、何だか楽しい気持ちにもなります。
ル・コルビュジエは建築家としてだけではなく、画家、文筆家などの多彩な顔を持っていたといわれています。

アートと建築の旅D フランス ル・コルビュジエ   ラ・トゥーレット修道院 / リヨン

2階に降りると、聖堂(教会)に続く廊下にもガラス窓から明るい光。
当時は珍しかったであろう長いスロープを下ります。建物が丘の斜面にあることを思い出させます。
突き当りが教会の入口です。

アートと建築の旅D フランス ル・コルビュジエ   ラ・トゥーレット修道院 / リヨン

聖堂の内部へ。
それまでの明るく開放的なイメージとは全く違う世界が広がります。

アートと建築の旅D フランス ル・コルビュジエ   ラ・トゥーレット修道院 / リヨン

室内に照明はなく、長方形や丸い形の明り取りから入ってくる自然光が室内にやさしく降り注ぎます。
細長いスリット窓から入る斜めの光が特に印象的でした。

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地下礼拝堂。
こちらも地形に沿って勾配しており、土地との結びつきを感じます。
暗さとコンクリートに囲まれた静寂の中にしばらく身を置いていると、そこでしか感じられない感覚が宿ってきて、神聖な心もちになります。

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聖堂と礼拝堂をゆっくり歩き、最初に抱いた暗い印象から、しだいに影の中のほのかな光を感じ取れるようになり、さらに時が経つにつれじんわりと光と色を豊かに受けとめることが出来ました。
内なる世界へ入っていくような豊かな祈りの空間でした。

おそらく1日の時間の経過や季節の移り変わりで、光と影の動きの変化が特別な空間を作り出すという、大胆かつドラマティックな演出をル・コルビュジエが緻密に計算したのだろうと想像しました。

南フランスで感じた柔らかい光とは違い、ル・コルビュジエの考えがディティールに宿った光と影の演出にある種の絵画的な要素を感じ、学びの多い印象的な機会となりました。

市街地に戻るとすっかり日が落ちて・・・
川に街の光が反射し幻想的な美しい風景に変わっていました。

アートと建築の旅D フランス ル・コルビュジエ   ラ・トゥーレット修道院 / リヨン


<Une petite pause“ちょっとひと休み”>

リヨンでのもうひとつの目的は、郷土料理を楽しめるブションでの食事。
どこに入ろうか迷いながらぶらぶら歩いていたら、地元のフランス人家族が「ここ美味しいわよ!」と教えてくださいました。
この出会いを信じて(!)、ご家族とほぼ同じメニューをいただきました。

アートと建築の旅D フランス ル・コルビュジエ   ラ・トゥーレット修道院 / リヨン
牛肉の赤ワイン煮込み、豚の内臓のソーセージ(マスタードソース)


コンセプト ジュエリーワークス
デザイナー 橋本志織





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