2025年03月28日

50年を経て、海を超えて交じりあったエンゲージリング


2本の指輪は、おひとりの方に贈られたエンゲージリングです。
2つの指輪が海を渡って交じりあい、こちらの2本のリングに生まれ変わりました。

50年を経て、海を超えて交じりあったエンゲージリング

50年を経て、海を超えて交じりあったエンゲージリング

ご相談にいらしたのは、アイルランド人の女性様と日本人の男性様。
それぞれのお母様から婚約指輪を譲り受け、
「2本を組み合わせて、エンゲージリングを作りたい。」
とご依頼をいただきました。

左が男性様のお母様の婚約指輪です。39年前に贈られたもの。
右が女性様のお母様の婚約指輪。こちらは49年前です。

アイルランドでは、ケルティックと呼ばれ、ブルーサファイアやグリーンサファイアのエンゲージリングが伝統的だそうです。小さい頃からお母様のジュエリーボックスを覗くのが好きだったという女性様、ご結婚を機に譲り受けたのだそう。

50年を経て、海を超えて交じりあったエンゲージリング

深いブルーのサファイアリングは、素敵なアンティークの雰囲気がありますが、
「高さを抑え、髪にひっかからず、普段から着けられるリングにしたい。」
という強いご要望がありました。

当初のお考えは1本のリングにということでしたが、センターストーンがどちらも立派でカジュアルに着けるには華やかになり過ぎてしまいます・・・。
何より40〜50年の時を経て、また海を渡って、ストーンが交じりあうことはとてもロマンティックだと思い、ダイヤ3石と、ケルト文化の伝統を引き継ぎサファイア1石の、2本のエンゲージリングをご提案させていただきました。

マリッジリングと合わせて3連で着けても素敵ですし、左右で着けるなどスタイリングを楽しめます。

50年を経て、海を超えて交じりあったエンゲージリング

サファイアを横向きにセッティングし、リングの高さも抑え、カジュアル・モダンに大変身しました。

50年を経て、海を超えて交じりあったエンゲージリング

サファイアのリングには、アイルランドのお母様の婚約の日を、日本のお母様の石がセンターストーンになったダイヤリングにはおふたりのお母様の名前をお入れしました。

50年を経て、海を超えて交じりあったエンゲージリング

50年を経て、海を超えて交じりあったエンゲージリング

アイルランドと日本。
お母様やお父様の想いも海を超えてこめられたスペシャルリングです。

50年を経て、海を超えて交じりあったエンゲージリング


コンセプト ジュエリーワークス
デザイナー 橋本志織


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posted by CONCEPT JEWELRY WORKS at 16:09 | Comment(0) | TrackBack(0) | 【結婚指輪&婚約指輪】

2025年03月15日

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」


デザイナーの橋本です。
2023年12月28日から2024年1月11日に訪れたフランス「アートと建築の旅」。
これまで9回にわたりご報告させていただきました。

この旅のテーマは「画家が見た光を探して」
最後に、その視点でこの旅全体を振り返ります。

私がたどった行程はこのようなルートです。
南フランスから入り北上し、パリがゴールでした。

フランス白地図 最終0322-529568.jpg

旅のスタートは、南フランスのコート・ダジュールでした。

【南フランス(コート・ダジュール)】

コバルトブルーの海岸線が続くコート・ダジュールは、冬でも明るい陽光が降り注ぎます。
最初に向かったのは、坂を上がったヴァンスの旧市街。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」

<マティス / ロザリオ礼拝堂>

ヴァンスは、この礼拝堂を手がけるためマティスが最晩年に過ごした場所です。
地中海の温かで穏やかな陽光が、マティスらしいデザインのステンドグラスを通して床や壁に混ざり合い、空間が色と光で満たされていました。
とても明るい礼拝堂で、訪れた人々をリラックスさせ、幸せでやさしい気持ちに導きます。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」
礼拝堂内部(マティス 82歳)


旅の序盤に滞在したニースは、青い海と青い空、そしてゆったりと流れる時間が多くの芸術家を魅了した場所。
マティスは48歳でニースに出逢い、85歳で亡くなるまでの37年間この地を拠点に過ごします。
「この光を毎朝見られると思うとその幸福が信じられなかった。」
と語っています。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」

<マティス「ザクロのある静物」 / マティス美術館>

晩年のマティスは体力とともに視力が衰えていく中、「人生における歓び」を投影したような作品に取り組みます。
ニースの美しい光と色彩に恋したマティスにとっては、まぶたの裏に焼きついたものを表現するような感覚だったのではないでしょうか。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」
ザクロのある静物(マティス 78歳)


山の中腹にある陶芸どころのヴァロリスも陽光降り注ぐ明るい町です。

ピカソも、晩年南フランスに魅了された画家のひとりです。
65歳で陶芸に出逢い、91歳で亡くなるまでヴァロリスを拠点に制作しました。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」

<ピカソ「戦争と平和」 / 国立ピカソ美術館>

終戦の開放感から平和を享受し、新しい家族の形もでき、ヴァロリスの人々にも愛され、心から喜びに満ち溢れたように陶芸に没頭します。
礼拝堂の壁一面に描かれた大作「戦争と平和」。
ドーム内部に「光と影」を対象的に描いており、その迫力に圧倒されます。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」
戦争と平和(ピカソ 71歳)


岬のある城壁に囲まれたアンティーブにもピカソ美術館があります。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」

<ピカソ「ライムのある静物画 2匹の魚とウツボ」 / ピカソ美術館>

ピカソはこの城の海側の光溢れる部屋を2ヶ月間アトリエにし、意欲的に制作しました。
穏やかな地中海を見おろしながら、優しい心もちと顔つきでキャンバスにむかうピカソの姿が目に浮かびます。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」
ライムのある静物画 2匹の魚とウツボ(ピカソ 65歳)


ほど近い場所に、ド・スタールの最晩年のアトリエもあります。

<二コラ・ド・スタール「アンティーブの城砦」 / ピカソ美術館>

この頃のド・スタールは、徐々に不穏になる恋人との関係や作品制作へのプレッシャーなのか、気持ちを反映しているように色彩の彩度が落ち着き、モノトーンやシックな作品が増えていきます。
地中海をのぞむ光が豊かな鮮やかな風景も、曇り空のような気持ちで描いたのか、はたまた美しい曇り空の日にインスピレーションを得て描いたのか・・・。
グレーに豊かな色彩を感じさせるのがド・スタールの魅力です。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」
アンティーブの城砦 (ド・スタール 40歳)

一方、アンティーブの前に拠点にしていたプロヴァンス・メネルブで描かれた作品では水面をオレンジで表現しています。彼の心の目がその時々の光をどう捉えていたかを想像することが出来ます。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」
マルティーグ(南仏)(ド・スタール 40歳)


海岸線を離れ、内陸部・リヨンに向かいました。

【リヨン(ローヌ・アルプ地方)】

ソーヌ川とローヌ川が流れる美しい街並みのフランス第2の都市リヨンは、川に映る景色が光輝く活気ある街です。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」

リヨン近郊の丘の斜面に建つル・コルビュジエが手がけたラトゥーレット修道院を訪れました。

<ル・コルビュジエ / ラトゥーレット修道院>

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」

内部に入ると、光の大砲と呼ばれた丸い形の採光窓から斜めに入ってくる自然光がやさしく降り注ぎます。
コルビュジエが時間の経過や季節の移り変わりをドラマティックに演出した光は、南フランスで感じた明るい光とは異なり、内なる世界へ向かう静謐な光でした。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」
修道院内部(コルビュジエ 73歳)


さらに北上し、なだらかな起伏が点在する実り豊かなブルゴーニュ地方へ。

【ディジョン(ブルゴーニュ地方)】

陽射しが強めのこの地方ですが、スイス国境にほど近いロンシャンに向かうと、ぐっと体感温度が下がります。

<ル・コルビュジエ / ロンシャン礼拝堂>

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」

外界とはうって変わり、内部に入ると暗い礼拝堂に南側から星のように煌めくたくさんの光が巡礼者を迎えます。
台形にくり抜かれた奥行きのあるガラス窓から差し込む優しい外光の拡散によって、礼拝堂全体に詩的で宇宙のような世界が広がります。リヨンの修道院の光とは異なる演出を感じます。

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礼拝堂内部(コルビュジエ 68歳)


フランス北東部のグランテスト地方は、ドイツと国境を接し内陸の雰囲気が漂よいます。
アール・ヌーヴォー発祥の地ナンシーへ。

【ナンシー(グランテスト・ロレーヌ地方)】

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」

<ルイ・マジョレル / マジョレル邸>

エミール・ガレが中心となったナンシー派の芸術家とこの町の職人が「生活を芸術に!」を胸に、新しい素材や表現方法に果敢に挑み多くの作品を生み出しました。
特にステンドガラスやガラス工芸は花開きました。
マジョレル邸はステンドガラスや変形ガラスの採用が印象的かつ効果的で、光を存分に取り入れた華やかでエレガントな室内です。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」
マジョレル邸テラス(ガレ 43歳)


そしていよいよ、パリを中心に自然と文化のイル・ド・フランスへ。

【ポワシー・パリ(イル・ド・フランス)】

パリ近郊・ポワシーの気候は、さらに気温が下がり雪が降り始めました。

<ル・コルビュジエ / サヴォワ邸>

散歩道のような木々を抜けるとコルビュジエが手がけたサヴォワ邸が姿を現しました。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」

「ピロティ、屋上庭園、自由な平面、水平連続窓、自由な立面」という近代建築の5原則が見事に体現されたサヴォア邸は、まさに「光との共演」といえます。
建物の荷重が柱で支えらるようになったことで、革新的な大きな窓や水平連続窓など光をふんだんに取り入れ、外界との境目を無くしたような解放感のある居住空間が実現しています。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」
屋上庭園(コルビュジエ 44歳)


そして、旅のゴールは、パリ。
滞在中はおひさまを見られず雪模様が続きました。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」

<ピカソ「タンバリンを持つ女」 / オランジュリー美術館>

印象派をはじめ、多くの画家たちに愛されたパリ。
ピカソもそのひとりです。
オランジュリー美術館で見たピカソのパリ・アトリエ時代の作品です。
結婚後、バレエなどの舞台衣装を制作したり、彫刻に専心したりと充実していた時代に描かれた一枚。
晩年とは異なる希望や自信を絵から感じます。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」
タンバリンを持つ女(ピカソ44歳)
 

最後の訪問は、私が想い続けてきた画家・二コラ・ド・スタールでした。

<二コラ・ド・スタール「コンポジション」 / パリ市立近代美術館>

ロシア生まれのド・スタールは、画家としての歩みをパリ・ゴーゲ通りのアトリエから始めます。
最愛のパートナーの死を乗り越え、新しい家族のために精力的に制作に励みます。
「黒の時代」を経て白色や明るい色が使われるのは、未来に確かな光を見ていたに違いありません。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」
コンポジション(ド・スタール 34歳)


私の「アートと建築の旅」は、画家の見た光を探して、歩いたロードムービーのような楽しいものでした。
多くの画家たちは、制作活動が充実していったり、その晩年には南フランスに向かい過ごしているので、私はその逆をたどったともいえます。
南フランスから北へ北へとフランスを縦断していくと、気候の変化とともに、光の量や性質の違いを確かに感じることが出来ました。

あの時の画家はその地の光をどのように感じ、見ていたのか、捉えていたのか・・・
アトリエを構える場所で気分が変化し、過ごす時間が変わり、作風が変わっていくのが分かりとても興味深かったです。
ピカソやマティスやド・スタールが愛したヴァンスやアンティーブは、私もとても魅了されました。

今回は冬の旅でしたが、また違う季節にきて考察してみたいと思いました。

<旅の終わりに>フランス・アートと建築の旅「画家が見た光を探して」


コンセプト ジュエリーワークス
デザイナー 橋本志織


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