デザイナーの橋本です。
年末年始に訪れたフランスで見たこと、感じたことをこのブログを借りて不定期でご紹介しています。
旅の始まりにマティスが手がけたロザリオ礼拝堂を訪ね穏やかで温かな心もちに。
続いてニース市内に戻り念願のマティス美術館へ。
ニース旧市街は歴史的にイタリア文化圏に属していた時代が長かったため、建物に赤や黄色のパステルカラーが見られ異国情緒な雰囲気が残ります。

ニース駅から北側へバスで15分ほど、丘の上のローマ時代の円形競技場のある公園に入ると、マティス最期のアトリエと、マティスが眠るお墓のすぐそばに、17世紀に建てられた赤い邸宅の「ニース市マティス美術館」があります。

マティス本人と遺族から寄贈された初期から晩年までの絵画、デッサン、版画、切り紙絵、彫刻などの他に、マティスが世界中から集め愛用していた家具やテキスタイル、オブジェなど個人的なものも多く所蔵する美術館です。
ほとんどが撮影が許されていましたので、現地の雰囲気とともにご紹介しますね。
美術館入り口では、2点の切り紙絵が迎えてくれました。
魚、鳥、サンゴ、海藻などがリズミカルに踊っているよう。

「オセアニア 海」「オセアニア 空」1946 (切り紙絵)
メインホールには8.7メートルほどある「花と果実」。
個人宅の中庭用に考案した作品で、亡くなる前年に完成したとは思えない力強さ。

「花と果実」1953 (切り紙絵)
私が最も興味を抱いたマティスの部屋の写真です。右下にはソファでくつろぐマティスの姿、左側には大きな鳥かご。たくさんの鳥や花、観葉植物と暮らしていた様子がうかがえます。
“私が夢見るのは座り心地のいい安楽椅子のような芸術である”と語ったマティス。
絵画作品にも登場するお気に入りのロカイユ様式の肘掛け椅子や、オリエンタルなテキスタイルも展示されています。


北フランス出身のマティスは、1917年(48才)でニースに出逢い、85才で亡くなるまでの37年間この地を中心に暮らします。
北部には見られない青い海と空、豊かな自然、色鮮やかな建物、ゆったりと流れる時間、ニースの美しい光と色彩に恋し、明るく鮮やかな作品がたくさん生まれていきます。
色彩豊かな切り紙絵の作品もニース時代に生まれます。
マティスの暮らしがそのまま絵画になったような作品。
ニースへ観光客を誘致するためのポスターになりました。
ポスターには“ニース 仕事と喜び”という言葉を自筆で添えたそうです。

「ザクロのある静物」1947 (油彩)
こちらの部屋には全面にブルーの気持ちよさそうに泳ぐ人。
晩年“好きだった海にもう行けなくても、この作品に囲まれていると海にいるようだ”と言っていたそう。

「プール」1952 (切り紙絵からセラミック)
ニースはマティスにとって「この光を毎朝見られると思うと、その幸福が信じられなかった。」と後に語るほど魅了する理想郷でした。
視力や体力がなくなっていく晩年でしたが、”人生における歓び”を作品に表現し続けたのでは・・・と感じることの出来た訪問でした。

ニースには5日間ほどステイし、マティスがお気に入りで繰り返し描いた椰子の木が並ぶ海岸沿いを歩くなど、マティスが過ごした日々に想いを馳せました。
「明るく温かい、そして人々を笑顔にするマティスの作品がいかに生まれたか・・・」
訪問前に抱いていた興味の答えを、冬のニースの淡い光の中に見つけられたような気がしました。

ただいま大作「花と果実」や切り紙絵の作品が、ニース市マティス美術館から東京・国立新美術館にきています。
「マティス 自由なフォルム」(国立新美術館・5月27日まで開催中)
<Une petite pause“ちょっとひと休み”>
2024年の元日はニースで迎えました。
信じられないくらいの穏やかな日没。
この地で暮らす皆さん海岸まで出てきて、おしゃべりしたり、一人で静かに過ごしたり、海が大好きで海とともに生きているんだなと感じました。
旅の前半は、しばらく南フランス・コートダジュール地方に滞在します。

コンセプト ジュエリーワークス
デザイナー 橋本志織
-旅のブログ掲載中-
−アートと建築の旅@− フランス【マティス ロザリオ礼拝堂 / ヴァンス】
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