デザイナーの橋本です。
年末年始に訪れたフランス「アートと建築の旅」も中盤、折り返しとなりました。
内陸のリヨンから高速列車で1時間半、ブルゴーニュの首都・ディジョンに向かいました。
目的は、建築に携わる方にとって一度は訪れたいと言われているル・コルビュジエの礼拝堂です。
ディジョンから東、スイス国境付近にあるコミューン、ロンシャン。
中世からロンシャンは巡礼地であり、個人旅では行くのが難しい場所にあります。
意を決してディジョンから車を借り、田園地帯を走り続けて2時間半・・・。

車窓から見えるのは、果てしなく広がる田園風景。期待感に不安が混ざります。
ロンシャンを見下ろす丘に上がると、西にソーヌ川平野、東にヴォ―ジュ山脈、南と北に小さな谷を臨むその神秘的な地形に思わず息をのみます。

個性の違う4つの地平線の風景にコルビュジエは魅了されたと言われています。
ノートルダム・デュ・オー礼拝堂(ロンシャン礼拝堂)は、第二次大戦で教会が壊されたのち、コルビュジエにより再建されました。
依頼したのは、「ラ・トゥーレット修道院」と同じ神父さんです。
周辺の山々と対話するかのように曲線で構成された外観は、ラ・トゥーレット修道院とは対照的に有機的なたたずまい。
ユニークな屋根のカタチは、ひさしの役目もあり、コルビュジエが大好きな海で出逢ったカニの甲羅がモティーフだそうです。

大規模な修繕が行われていました。
礼拝堂内部へ。
東側の祭壇の壁には、戦禍を逃れた聖母子像が大切に小窓に納められていました。壁の裏手、屋外広場で典礼をする際は、外側に向けられるように考えられています。

ユニークな屋根の形の理由が内部に入り見上げるとようやく分かります。
天井は、布がたわんでいるような大胆な曲面が覆っていました。
屋根と壁の間には全面にわたり細いスリットがあり、光が入り軽やかな印象を与えます。

暗い礼拝堂を彩るのは、南側から入る星のように煌めくたくさんの光。
台形にくりぬかれた奥行きのあるガラス窓から差し込む外光の拡散によって、礼拝堂全体に神秘的で詩的な世界が広がります。

左側に見えた塔は、南側に位置する小礼拝堂です。
高い天井から入る明るいやわらかな自然光とフロアライトとの競演が見られます。

ここまでの見学を終え、この礼拝堂の最大の魅力は内部空間であり、まるで光の実験室のように光の特性を生かした様々な演出があることだと感じました。
一方、訪問前に私が期待していたのは、コルビュジエの画家としての一面を感じ取ることです。
それは、予想を超えて存分に表現されていました。
ガラスにコルビュジエ自身が黒い筆で描いた絵や文字の数々。
筆跡から彼の遊び心やチャーミングな側面が感じられます。

コルビュジエは、ステンドグラスではなく、薄い色のガラスをこだわって使用したそうです。
外の移ろいゆく植物や空や鳥が、彼が描いたガラス窓の中で生き生きとしたモチーフになっています。
室内にいながら鳥のさえずりや風の音が感じられるような、外部と内部の交流を考えたコルビュジエのやさしい目線を感じました。
いわゆるコルビュジエらしい近代建築5原則の枠内では語ることのできない貴重で芸術的な手仕事です。

こちらのガラス面には、いくつかのフレーズが並んでいます。
それらは、聖母マリアの祈りから生まれた言葉たちです。

北側の正面出入り口。
エナメルの鮮やかな装飾が施された大きな回転扉も、コルビュジエによるものです。
巡礼が行われる日にしか開かれないそうです。

コルビュジエはロンシャン礼拝堂に対し、「沈黙、祈り、平和、内なる喜びの場(光の器)を創造したいと望みました。」と言っています。
私は、建築内をめぐり生命賛歌のような内なる喜びを強く感じました。
往復で5時間程もかかり訪れるのに大変な思いをしましたが、その内部空間に入り体感することで、世界各国から人を惹きつけてやまない魅力ある建築とアートの力を理解することが出来、とても感動しました。
見学を終え、礼拝堂を背にその広大な景色の中に身を置いた時、時空を超えてコルビュジエからの想いを受け取ったような不思議な気持ちになりました。

<Une petite pause“ちょっとひと休み”>
ブルゴーニュといえば、ワイン。
ディジョンに戻り、夜、宿泊先近くのワインカーブ・La Cave de la Cité(ラ・カーヴ・ドゥ・ラ・シテ)へ。
壁一面にワインボトルが並び、テイスティングのマシンがぐるりと360度!
好みのワインの前でプリペイドカードを挿入、ボタンを押せばワインがグラスに注がれます。
皆さまワイングラスを片手に味わいながらも熱く語り合っていらっしゃる。
なるほど、フランス人のワインや食への意識はやはり高い!?

コンセプト ジュエリーワークス
デザイナー 橋本志織
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