デザイナーの橋本です。
年末年始に訪れたフランス「アートと建築の旅」。
次の目的地は、ディジョンから高速列車で北へ1時間半、いよいよ芸術の都・パリに入ります!
旅の後半は、パリを拠点にアートと建築を堪能しました。

パリの宿に一旦トランクを置き、東駅から再び高速列車に乗りさらに東へ1時間半。
移動日の半日を使ってもどうしても行きたい場所がありました。
フランス北東部ロレーヌ地方、「アール・ヌーヴォー」が生まれたナンシーです。
「アール・ヌーヴォー」とは、19世紀末からヨーロッパを中心に花開いた新しい芸術運動です。自然界をモティーフにした有機的で自由な曲線構成と、鉄やガラスなどの当時の新素材の起用が特徴です。
産業革命による大量生産の反動で起こったウィリアム・モリス(イギリス)のアーツ・アンド・クラフツ運動を筆頭に「社会と生活に芸術を取り戻そう!」という思想がヨーロッパ各地へ広まり、アール・ヌーヴォーとして結実し、そしてアール・デコ、モダニズムへつながります。
私は、学生の頃からオーストリアやベルギー、フランス、スペインをめぐり、アール・ヌーヴォー様式の建築、工芸、美術、グラフィックなどの作品に数多く触れてきましたが、この装飾的で高度にデザインされた表現方法がいかにして、また、なぜこの地で生まれたのか、それを知りたくてナンシーを目指したのです。
駅を出ると、目の前に広がる古い街並みにタイムスリップしたような感覚と同時に、ワクワクする気持ちがわいてきます。

標識に「Art Nouveau」の文字!
はじめにナンシー派美術館へ。
ナンシー派(L'École de Nancy)とは、ガラス工芸デザイナーであり植物学者でもあるエミール・ガレをリーダーに、ナンシーの芸術家と職人が手を取り合い、手工芸・芸術・教育など、地元の産業と文化の振興を目的として作られた同盟です。

こちらの部屋では、当時の雰囲気がそのまま再現されています。
天井から照明、家具、調度品に至るまですべてが緻密にデザイン、創作されています。

館内には数多くのエミール・ガレの作品が展示されており、彼の創作の変遷と研究の軌跡を辿れます。
こちらはガレにはめずらしい雰囲気の陶芸作品。
右端に愛らしいサルがひっそりと。。

「エミール・ガレ 猿の装飾皿」1880年頃
最も感動した作品。
モティーフが動植物ではなくグラフィカル。細かな美しい絵付けに目が釘づけになります。

「エミール・ガレ ペルシャ騎士の箱」1882年頃
続いて、美術館から少し歩いてマジョレル邸へ。
マジョレル邸をデザインしたルイ・マジョレルは、家具職人・金属工芸家でした。
建築、家具、金属、ステンドガラス・タイル(陶)などの内装は、すべて彼の仲間たちであるナンシー派の芸術家や職人たちとの技術と叡智の結集です。

エントランス。
手すり、庇や窓柵のモティーフに金属工芸の技が光ります。
特に手すりの優美でのびやかな曲線にしびれました。

内装には木材がふんだんに使われ温かい雰囲気。家具はすべてマジョレル氏自身によるものです。炎が燃えているようなひときわ存在感をはなっている暖炉は陶芸家の作品です。

優しい曲線に囲まれた室内テラス。
壁はすべて陶製のタイルです。

階段と手すりとペンダントライトが奏でる曲線と装飾のハーモニーは、アール・ヌーヴォー様式の真骨頂。
美しいステンドガラスは、当時人気のガラス工芸家によるもの。

邸内からエントランスを眺めます。
可愛いモティーフはルナリアの花です。壁や床にも花が広がり、空間全体に抒情的な印象をもたらします。

2ヶ所の訪問を終え、ここで感じた空間の雰囲気や、出逢った多くの作品から私の心に残ったのは「情熱と喜び」です。
「生活を芸術に!」を胸に、新しい素材や表現方法に果敢に挑んだ芸術家たちの情熱と、この街を愛する職人たちの丁寧な手仕事が、創作を芸術の域に高めていった様子が浮かびます。
ナンシーは、周辺の区域がドイツ領になる中、フランス領に留まったそうです。
その喜びが、より自然との共生を深め、芸術性を高めたのかもしれません。
アートに携わる者の一人として、この地に立てたことに、そして力強いエネルギーをいただけたことに感謝の気持ちがじわりとわいてきました。

<Une petite pause“ちょっとひと休み”>
パリからナンシーに向かう行きの高速列車でのひとコマ。
何らかの理由で1時間くらい停車中。
ドアは開け放たれ、皆さん、野原で犬と散歩したり、子供は走ったりと長めのブレイクタイム。
もしかして、慣れっこ?
私は、ナンシーに無事たどり着けるか不安でいっぱい。。

コンセプト ジュエリーワークス
デザイナー 橋本志織
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